Instagram[100夜100編]と連動しておすすめの短編小説をご紹介します。
毎日欠かさず1作品を読む活動を始めてこれまで読破した作品は1,830作品以上。
1日1作品しか読まないというマイルールなので連続1,830日=5年超です!
その中で「これはおすすめ!」という作品は100編を超えました。
*ペントルで紹介する作品は随時追加していきます。
100編超のおすすめをすぐに見たいという方はInstagramで#100夜100編が選ぶ良作短編をご覧ください。
ヘレン・オイェイェミ『あなたのものじゃないものは、あなたのものじゃない』より
ナイジェリア生まれ、プラハ在住の作家ヘレン・オイェイェミによる短編集。
「あなたの血ってこのくらい赤い?」完読目安:70分
ペントル的おすすめ度:95
「大人になったってどうすればわかるの?」。自分でもどういう意味かよくわかっていない言葉を使いはじめたらそうなるんだよ
”人形遣いの学校”を舞台にした人と人形と幽霊の奇妙な交流の物語
「小説ってこんなにも自由なんだ」と再認識させられました
ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』より
読書上級者にもおすすめの一冊。
「ソー・ロング」完読目安:18分
ペントル的おすすめ度:95
砂まみれの閉じたまぶたごしに、太陽がいくつもの色に爆ぜた。欲望が燃える
【名作】の定義は難しい。ストーリーが面白いだけではダメだし表現が美しいだけでもダメ。もちろん時代によって評価も変わるし国や文化によっても変わる。 でも。誰かの心に深く響けばそれはもう名作だと言っていいのだと思います。
一人の心を動かすことは ほとんど世界を動かすのと同じ
この作品は僕の心に深く深く響きました。少なくともその意味でこの作品は間違いなく名作です。
シャーマン・アレクシー『ローン・レンジャーとトント、天国で殴り合う』より
現代を生きるネイティブアメリカンのリアルを様々な趣向で描き出した連作短編集。
サンダンス映画祭で絶賛された映画『スモーク・シグナルズ』の原作となった「アリゾナ州フェニックスってのは」も収録されています。
「しきたりという名のドラッグ」完読目安:15分
ペントル的おすすめ度:92
僕たちは懸命に生き、同時にどこかで自分を騙したり、なにかに陶酔することで現実から逃げたりして生きている。それは決して悪いことではなくて前に進むために必要なこと。
ネイティブ・アメリカンのリアル。世界の多様性も感じられる一編です
村上春樹『パン屋再襲撃』より
ノーベル文学賞の季節になると日本人作家で一番に名前の挙がる村上春樹。
長編作品が話題になることが多いですが短編作品も魅力的です。
「象の消滅」
ペントル的おすすめ度:96
しかしそれを口にしたその瞬間に、僕は自分がそのような状況にとって最も不適当な話題をひっぱりだしてしまったことに気づいた。僕は象の話なんて持ちだすべきではなかったのだ。
読書人生で初めて深く共感した作品かもしれません。
物語の根底に流れている感情の手触りを共有できたという感覚。
折りに触れ何度も読み返しています
表題作の「パン屋再襲撃」は絵本(ヴィジュアルブック)にもなっています。
西加奈子『おまじない』より
西加奈子は、イラン・テヘランで生まれエジプト・カイロ〜大阪和泉市育ちという異色の経歴。
独特の世界観を持ちつつしっかりとした文章力で信頼のおける作家です。
読みやすい上に味わい深い作品が多いので読書初心者から上級者まですべての方におすすめできます。
「いちご」完読目安:18分
ペントル的おすすめ度:95
「生き残る奴だけ生き残ればいいんじゃ」
いちごを育てることに怖いほどの情熱を注ぐ”遠い親戚”の浮ちゃん。
都会の生活に染まっていく私。
女性作家による女性読者のための作品のようにも思えますが女性には刺さりすぎるんじゃないかと勝手に心配になります。
あえて軽く見せながらも軽薄にならない文章の巧みさにうなりました
ケン・リュウ『もののあはれ』より
現代中国SF界を牽引する作家です。
自信の作品の執筆の傍ら中国SFの翻訳も積極的に行うなど中国SF界への貢献は計り知れません。
弁護士でプログラマーという多才さ!
「もののあはれ」完読目安:30分
ペントル的おすすめ度:95
ケン・リュウにはヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞という史上初の3冠に輝いた「紙の動物園」という代表作もあるのですがペントル的にはより壮大で切実な「もののあはれ」を推薦します。
小惑星の衝突が迫るなか打ち上げられた世代宇宙船に乗船した日本人乗組員の清水大翔。宇宙船の危機的状況に彼が取った行動は?
こちらもヒューゴー賞受賞。大傑作です。
特に福岡県民には読んでほしい!
折口真喜子『恋する狐』より
画家で俳人の与謝蕪村が見聞きした”妖”たちの物語。
日本文化の“粋”を堪能できます
「いたずら青嵐」完読目安:15分
ペントル的おすすめ度:95
この今の時期に吹く強い風を青嵐、いうんやけど、ええ名前やと思わんか?
シャーウッド・アンダーソン『ワインズバーグ、オハイオ』より
長編小説には【総合小説】という考え方があって、村上春樹の言葉を借りれば次のように定義されます。
「いろいろな世界観、いろいろなパースペクティブをひとつの中に詰め込んでそれらを絡み合わせることによって、何か新しい世界観が浮かび上がってくる」 ような小説
- wikipedia:「村上春樹」より -
短編小説の世界でも【連作短編】という形で世界観を総合的に表現しようという短編集があります。この『ワインズバーグ、オハイオ 』はその先駆け的存在と評されています。
「いびつな者たちの書」完読目安:5分
ペントル的おすすめ度:92
短い作品ですが”世界の在り方・成り立ち”そんなことまで考えさせられる哲学的な一編です。
個人的にこのさき何度も読み返す作品になりそうです。
世界がまだ若かった始まりの頃、数知れぬ考えがあったが、真理といったものはなかった。
短編でこんなことまで表現できるんだと嘆息
ローリー・リン・ドラモンド『あなたに不利な証拠として』より
この短編集の最初の一編を読みながら「これから先この人が書く作品は全部読む!」とまで思わされました。
「完全」完読目安:20分
ペントル的おすすめ度:97
この短編集はどの作品もハズレなしです。
ミステリーではなく警察小説。警察を舞台にした純文学という趣です。
作者自身の制服警官としての経験を基にしたリアルな心理描写が胸に迫ります
残念ながらものすごく寡作なようでまだ彼女の他の作品集には出会えてません。
J.D.サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』より
アメリカ文学界のキーパーソンの一人・サリンジャーの自選短編集。
正直にいうとご紹介する「笑い男」以外はピンとこなかったんですがそれを差し引いてもおすすめしたい一冊です。
「笑い男」完読目安30分
ペントル的おすすめ度:96
初めて読んだのは10代の頃でした。それから折に触れ何度も読み返しています。
名作は読むたびに発見があるものですがこの作品がまさにそれ。
主人公の少年と団長の強くもはかない絆。劇中劇のダークな空気感。すべてがぐっと身に迫ってきます。
『超短編小説70 Sudden Fiction』より
クオリティーの高い超・短編が70作品収録されたお得な一冊。
スティーヴン・シュッツマン「銀行強盗」完読目安:5分
ペントル的おすすめ度:93
銀行強盗は窓口の行員にメモを渡して、自分の物語を語った。
銀行強盗の物語。恋と金。そして未来。
小説でしか表現できないものというものが確かにあります。そういうことを再確認させてくれる作品に出会えた時はなんとも言えない幸せな気持ちになります。
ああ危険、と彼女は密かに思った。あなたはまるで恋のようなもの。
スティーヴン・ディクソン「署名」完読目安:10分
ペントル的おすすめ度:90
妻が死ぬ。私はもうひとりぼっちだ。
愛の表現に様々な形があるように悲しみの表現にも様々な形があります。
見事な切れ味の短編です。
一穂ミチ『スモールワールズ』より
2021年最も旬の作家と言えるかもしれません。
近くのジュンク堂書店で激しく推されていたのでのせられてみました
「ネオンテトラ」完読目安:35分
ペントル的おすすめ度:90
なぜ、望んでいないたぐいの幸運にはこうもたやすく恵まれるのだろう。
純文学?ミステリー?SF?
これは予備知識なしに読んだ方が良い作品です。
自分が気持ちよくなれるようととのえたのに、どうしてだろう。わたしの支配下にありながらわたしを拒絶している気がする。
眉村卓『静かな終末』より
日本SF界の巨匠・眉村卓の作品集。これまで作品集へ未収録だったり文庫化されていなかった作品が多数収録されています。
表題作「静かな終末」完読目安:10分
ペントル的おすすめ度:92
就業前から、妙な噂がひろがっていた。ラジオも新聞も暴動をおそれて一言も事実を発表していないが、世界の二大国が国交断絶となり、最初の弾道弾が飛びつつあるというのだ。
表題作はさすがの傑作でした。
世界で本当に起こっていることは何か。知ってることと知らないこと。知らされることと知らされないこと。そんなことを考えさせられます。
陳浩基『ディオゲネス変奏曲』より
最近にわかに注目度が上がっている華文(中国語)ミステリー。その第一人者である陳浩基の自選短編集です。

「いとしのエリー」完読目安:12分
ペントル的おすすめ度:90
実のところ、わたしたちは世間から見られているような仲睦まじい夫婦ではなかった。
美しい妻の死体を見下ろす夫。浮気の影。そして偽装工作。
見事です。
坂口安吾『明治開花 安吾捕物帖』より
昭和の文豪・坂口安吾によるミステリー・シリーズから。
「舞踏会殺人事件」完読目安:45分
ペントル的おすすめ度:90
海舟の前にかしこまった虎之介は、後先をとりちがえないように念を入れて、語り終ってホッとした。
閣僚や各国の大公使も出席する舞踏会で政商の加納五兵衛が殺される。
いわゆる“安楽椅子探偵もの”とも言えますがちょっと珍しい構成です。
登場人物が多いのでストーリーの把握に苦労するかも
明治華族の独特な文化を感じることができる一編です。
まとめ
ペントル的におすすめの短編小説を紹介しました。
掲載作品は随時追加します。100編を超えるおすすめ作品をすぐに見たいという方はInstagramで#100夜100編が選ぶ良作短編をチェックしてください。
この記事では【おすすめ作品】としてペントル的評価90点以上のものに限定していますがInstagram[100夜100編]ではその他の作品もご覧いただけます。
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